低温調理に必要なものとその理由
低温調理(真空調理)は失敗しにくく、食材によってはその美味しさを従来の調理法よりも引き出すことが出来る調理法ですが、行うためにはちょっとした知識や道具が必要となります。
その道具や知識についてお伝えします。
低温調理について
低温調理とは一般的な調理法「煮る・焼く・蒸す」などとは違う比較的新しい調理法です。
(よく「第4の調理法」と紹介されていますが、屁理屈を言ったりしなければ普通に調理法は4つ以上ありますよね・・・)
上記の「煮る・焼く・蒸す」や「揚げる・炒める」などは基本的に100℃以上となりますが、それよりも低温で調理することが出来る調理法です。
他の調理法で言うと、温度的には燻製の温燻に近いかもしれません。
ただし、温度管理は燻製以上にシビアです(低温調理器がやってくれますが)。
効果について
低温で調理することで栄養素が壊れにくく、温度によってタンパク質の変性をコントロールすることが出来ます(詳しくはGoogle検索)。
これにより火加減や加熱時間の失敗がなく、美味しいローストビーフなどの料理を作ることができます。
温度について
肉を低温で調理する関係上、温度を低くしすぎると細菌が増殖したり、寄生虫を生きたまま摂取してしまう可能性があります。
肉の種類や部位によって菌や寄生虫の種類が違うため、それぞれの下限の温度が変わってきます。
ただ一般的な肉であれば65℃で短時間のうちに死滅するはずなので、65℃で調理しておけば菌などの問題は無くなります(詳しくはGoogle検索)。
もちろん、65℃あれば大丈夫と言っても一瞬で調理が完了するわけではありません。
きちんと肉の中心まで65℃にする必要があります。
また、調理時間を決めるには「死滅時間」を考慮する必要があります。
例えば一般的に肉に付着する菌で最も熱に強い病原性大腸菌を死滅させる場合は、63℃の状態で30分キープする必要があります。
そのため、「肉の中心の温度が63℃になってから30分」が経過しないと菌が完全に死滅しません(肉の中心にも病原性大腸菌がいる場合)。
死滅時間は温度が低くなるほど長くなるため、低温にするほど調理時間が長くなるという特徴があります。
適切な温度については諸説ありますが、肉の場合はタンパク質のミオシンとアクチン・コラーゲンの変性温度から、55℃~65℃が良いようです。
私は保存食を作るときは65℃で、それ以外は「低温調理 料理名」で検索すれば大抵温度を載せているブログなどが出てくるので、その温度に合わせています。
下の画像は57℃で3時間低温調理した後に表面を焼いたステーキの画像です。
ピンク色ですが火が通っており、しっとりとして美味しかったです。
必要な道具
- 低温調理器(真空調理器)
- 水を張れる容器
- 真空パック器(無ければジップロック)
低温調理器(真空調理器)
低温調理器は簡単に言うと「お湯の温度を一定に保つ機械」です。
正確に温度を保ってくれるため、1,2℃違うと殺菌やタンパク質の変質に違いが出てしまう低温調理では必須の機器になります。
もちろん弱火で鍋の温度を一定に保ったり、炊飯器の保温モードでも調理できないというわけではありませんが、大雑把な管理しか出来ないので何かしらを諦めることになります(殺菌、美味しさ、調理時間など・・・)。
また、低温調理器はスクリューによって水流を起こして温水を撹拌します。
これによってお湯の中に沢山のパックを入れた場合でも熱が伝わらずに温度が低くなってしまうということが起きにくくなります。
私は下記の機器を使用しています。
廉価な機種で先発のANOVAより低機能ですが、特に不自由なく使えています(私が買ったときは8,000円程度でした)。
水を張る容器
低温調理器はただ加熱をする機器なので、別途水を張る容器を用意する必要があります。
この容器が意外と重要で、熱が逃げにくい容器を使ったほうが良いです
熱が逃げてしまうような容器だと加熱の電力が多く必要になり「電気代が高くなる」、「加熱に時間がかかる」、また端の温度が低くなるので「温度を正確に一定に保てない」というデメリットがあります。
また、フタが無いとお湯が蒸発して温度が低くなり、同様のことが発生してしまいます。
私は下記の発泡スチロールの容器を低温調理器に合わせてカットして使用しています。
(私は下記の容器で何回も低温調理していますが、水を入れないようにと注意書きがあるので自己責任でお願いします。)
ただし、このクーラーボックスはデカイので一気に保存食を作る時は良いのですが、1食分の調理をしたい時は加熱に余計な時間と電力がかかるのでおすすめしません。
少量の調理をする場合は下の写真のような小型の容器を使うと捗ります。
ホームセンター( ケーヨーデイツー )で500円程度で売っていました。
外寸が大体高さ31cm、横31cm、奥行き18cm程度のもので、1食分の調理にぴったりです。
容器の作り方
低温調理器を付けて蓋をしなければならないので容器の蓋を切ったりする必要があります。
書かなくても大丈夫だとは思いますが、一応作り方を記載します。
まず上記の発泡スチロールの容器とカッター(または発泡スチロールカッター)を用意します。
私の場合、小さい方は普通のカッターで問題ありませんでしたが、大きい方は発泡スチロールカッターを用意したほうが良いです。
大きい方で発泡スチロールカッターを使う場合は100均のものでも容器を作成はできますが、電熱線が短くてすごく使いづらいので、ちょっと高くても電熱線が長いやつを購入した方が良いです・・・。
次に低温調理器を固定する部分(蓋じゃなくて水を入れる容器の方)をカットします。
低温調理器をセットしたり外したりしながら、邪魔な部分を切っていきます。
もし切らなくても正常にセットできる場合はこの工程は飛ばしてしまって大丈夫です(小さい容器は切る必要ありませんでした)。
次にフタ部分ををカットします。
容器に低温調理器をセットした状態で、フタを少しずつ削り、低温調理器がセットされた状態で正常にフタが閉まるようにします。
隙間はあまり空いていないほうが保温性が高くなるので、出来るだけぴったりになるようにカットしてください。
下の画像では真っ直ぐ切り込みを入れてしまったため、少し隙間が空いてしまいました。
低温調理器と蓋をセットして問題なければ完成です。
真空パック器
無ければジップロックでも構いませんが、真空パック器を使ったほうが良い理由がいくつかあります。
まず1つ目の理由は空気を抜きやすいことです。
空気は天然の断熱材で、羽毛布団も発泡スチロールも空気を抜いてしまえば断熱できません。
袋の中に空気が入ってしまうと、その分熱が若干伝わりにくくなります。
2つ目の理由は値段です。
真空パック器は1万円程度しますが、袋は1枚10円程度(20cm×30cmの場合)でジップロックよりも安くなります。
大量に使う場合は真空パック器にしてしまったほうが得です。
3つ目は保存生が良いことです。
真空パックだと熱で袋を完全に閉じてしまうので保存性が良くなります。
長期間保存する必要がない場合はジップロックでも構いません。
私がチャーシューを作った時は20cm×30cmの袋に入りそうになかったので、大きめのジップロックを使用しました。
低温調理の手順
まず肉を袋に入れて空気を抜きます。
袋に入れる前の味付けや焼き目をつけるなどの作業はレシピや好みに従って決めてください。
次に低温調理用の容器をお風呂場などの水漏れしても良い場所に移動し、お湯を張ります。
水漏れしても良い場所に移動する理由は、発泡スチロールが割れた場合や水が染み出してきたときに床が水浸しにならないようにするためなので、頑丈な容器を使う場合は移動しなくても大丈夫です。
キャプテンスタッグの容器だと水漏れしたことはありませんが、ホームセンターの容器では5時間位で全体から水漏れしてきたことがあるので注意してください。
私はシャワーを熱い設定にして入れていますが、もし電気のほうが安く使えるなら水を入れても良いかもしれません。
ただ、低温調理器での加熱は結構時間がかかるのでシャワーでお湯を出してしまったほうが早く調理できます。
また、ここで待つと袋に入れた肉の菌が増殖してしまうので、慣れたら肉の下準備前に低温調理器をセットしてしまったほうが良いです。
お湯を張り、低温調理器をセットしたら温度と時間を設定してフタをして放置します。
低温調理器から音が鳴り、設定した温度付近になったら袋詰めの肉を入れます。
加熱中に入れることも出来ますが、40℃付近は菌が繁殖しやすいのでなるべく温度が高くなってから入れるのが良いです。
一度にたくさんの肉を入れる時は、低温調理器を中心として放射状になるように入れます。
これによって熱が伝わりやすくなり、全体的に均一な仕上がりとなります。
肉を入れたらフタをして設定時間が経過するまで待ちます。
設定時間が経過すると低温調理器から音が鳴るので、肉を取り出します。
この後の処理はレシピに従ってください。
例えば鶏の胸肉のハムは温かいまま食べて良いと思いますが、ローストビーフは大抵冷ますはずです。
焼き目をつけるなどして完成となります。
まとめ
- 低温調理の温度などはきちんと調べてから調理しよう
- 専用の器具を用意した方が健康被害もなく、早く美味しくできる
- 発泡スチロール容器で電気代節約、時短、正確な温度管理
私が低温調理に関して実践している方法についてまとめてみました。
本当に失敗がなく、安いお肉でも美味しい料理が作れるのでおすすめです。
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